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2007年 02月 06日
「さよなら絶望先生」第80話を見て浮かんだ妄想をSSにしました。あんまり臼井君が可哀想だったので、ちょっとだけ彼を慰めるつもりで書きました。 登場人物は、臼井君、久藤君、あびるちゃんの三人。中身はごく健全です。 -=-=-=-=-=-=-=- 倍率一倍未満の選挙に落ちた日の夕方、臼井はとぼとぼと家路を辿っていた。まさか、不信任の数が信任の三倍あるとは思わなかった。 ――俺は他人に必要とされていない、ダメ人間なんだろうか…… このやりきれなさ、虚脱感をどこかで発散したかった。無性に人の温もりに触れたかった。 ――そうだ、女王様に慰めてもらおう! こう思いついて、いそいそと財布をチェックした。見ると、財布の中の「準備」は万全だが、肝心の中身の方が乏しかった。ポスターの材料費を負担したり、描いてもらったお礼の差し入れをしたりと出費が嵩んだからだろうか。 ――あーあ。これじゃあ、女王様の所にも行けないなぁ…… 余計に気落ちして背を丸めて歩いていると、肩をポンと叩いてきた者がいる。 「やぁ」 振り向くと、久藤がそこにいた。 「久藤……街で会うのは珍しいなあ」 「ちょうどよかった。ちょっと、手伝ってほしいことがあるんだけど、いいかな?」 気分がくさくさしていたところなので、即座に返答した。 「いいよ。で、どこ行くんだい?」 「ちょっと、服を買おうと思って」 「服~!?」 あまりに久藤らしくない話題に、臼井は目をパチクリさせた。 「それは珍しいな。本なら分かるけど。たくさん本を買うから持つのを手伝えってことかと思ってたよ」 「いや、それは臼井に申し訳ないから。それより、日頃自分で買わないから、どんな服を選んだらいいかさっぱり分からないんだ。だから、客観的なアドヴァイスが欲しいんだけど」 「俺もそんなに詳しくないけど……まあ、行ってみようか」 「ありがとう。恩に着るよ」 こうしてあれこれと服選びに付き合い、お礼として久藤の奢りでマックへ付き合うことになった。 店内でも、二人は健全な文化系男子高校生としてごく普通の会話を交わした。久藤は話題に選挙のせの字も出さなかった。 話をするうちに、いつの間にか自然と気分が晴れていくのが分かった。 ――久藤……お前、いいヤツだな。……ありがとう。 臼井は久藤流の慰め方に感謝した。 ☆ 久藤と別れた帰り道、住宅街を駅に向かって歩いている途中で、思いがけず、あびるを見かけた。 もうほぼ日も暮れているというのに、他人の家の前でしゃがみこんでいる。 時々揺れているお下げと白いうなじが眩しい。 臼井は思い切って声をかけてみた。 「あびるサン、どうしたの」 あびるはゆっくり振り向いた。 「あ、いたの……このコと遊んでるのよ」 あびるの手元を見ると、子猫が一匹、あびるの指先にじゃれついていた。 首輪があるから飼い猫だろう。全身が雪のように白く、毛並みが柔らかそうだ。 子猫は実に楽しそうな様子をしている。 いかにも人懐っこそうで、あびるが首筋をくすぐると喉をごろごろ鳴らす。 背を撫でると気持ちよさそうに目を細める。 肉球をぷにぷにしても、嫌がらない。 ちょっとしっぽを掴んで引っ張ると、さすがにこれは抜こうとした。 臼井はあびるの横顔を見た。 普段のクールビューティぶりも実に魅力的だが、今の彼女は実に生き生きとして、はちきれんばかりの笑顔がこぼれている。何とも可愛らしい。 ――動物好きに悪いヒトはいないよなあ。 臼井はあびるに惚れ直した。 すると、あびるが臼井にも子猫と触れ合うよう誘ってきた。 「さあ、臼井君も触ってみて」 「う、うん」 恐る恐る触ってみると、当たり前のように臼井にも懐いてきた。まるでずっと以前から二人がこの子猫の飼い主だったように懐く様は、心の底から二人を信頼しているように思える。 臼井は、選挙に落ちた心の傷が、実は大したことないような気がしてきた。 「ミーちゃん、ごはんよ~」 家の中から声がした。子猫は二人の足に身体を一しきり擦り寄せてから、ニャアンと一声鳴いて家の中へ入っていった。 子猫を見送っていると、あびるが臼井に尋ねてきた。 「ところで、どうしてここへ?」 「久藤とマックへ行った帰りなんです」 「二人、付き合ってたの?」 「あ、あびるサン!」臼井はドギマギした。 「冗談よ」 珍しく臼井相手に軽口を叩いたあびるは、ふと臼井の首筋に目を留めた。 「あれ? マフラーはどうしたの?」 「え?」 言われて首に手を遣り、初めてマフラーをしていないことに気が付いた。 「学校かマックかどこかに忘れちゃったみたいで」 「それじゃあ風邪引くわよ。よかったら、これでもして帰って。明日戻してくれればいいから」 こう言うと、あびるは自分の首に巻いているマフラーをふわあっと臼井の首に巻いた。 「あ、ああ、あの、あのっ」 突然のことでうまく声が出ない。ようやく心を落ち着かせて臼井は言った。 「あ、ありがとう。でも、あびるサンこそ風邪をひいたら大変」 「あ、私はもう一つ持ってるから」 あびるはさっと鞄からアライグマの姿をした襟巻きを出した。 「じゃあね」 「どうもありがとう。……お、おやすみ」 「おやすみ」 あびるはにこっと微笑むと、すっと向こうへ歩いていった。 臼井はしばらくそこに立ち尽くしていた。あびるの笑顔がいつまでも目の前から離れない。 ――あびるサン…… あびるの体の温もりとほのかに甘い香りを首に感じながら、臼井は昼間とうって変わった穏やかな気分でゆっくり帰途についた。 ──[完]──
by herolynQ
| 2007-02-06 19:11
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